
「社員がChatGPTに仕事の内容を入力しているけど、大丈夫?」 「AIツールを使い始めたいけど、情報漏洩が心配で踏み切れない」
2026年現在、ChatGPT・Gemini・Claudeなどの生成AIツールは、多くの企業で業務効率化のツールとして急速に普及しています。しかし便利な反面、使い方を間違えると深刻な情報漏洩・セキュリティリスクに直結することを正しく理解している企業はまだ少ないのが現状です。
特に中小企業では、セキュリティ専門の担当者がいないケースが多く、社員が無意識に会社の機密情報をAIに入力してしまっているというリスクが現実に起きています。
この記事では、AIツール活用時に生じるセキュリティリスクの実態・具体的な対策・社内ルールの作り方まで、2026年時点の正確な情報をもとに解説します。
AIツール活用で生じる主なセキュリティリスク
リスク①|入力した情報がAIの学習データになる可能性
生成AIサービスの多くは、ユーザーが入力した内容をAIの学習データとして活用する設定になっている場合があります。つまり、社員が業務内容・顧客情報・社内機密を入力すると、それがAIの学習に使われ、第三者への回答に影響する可能性があります。
ただし、主要な生成AIサービスでは以下のような対応が取られています。
・ChatGPT(OpenAI):有料プラン(ChatGPT Team・Enterprise)では、デフォルトでチャット履歴がオフになりトレーニングに使われない設定が可能
・Gemini(Google):Google Workspaceの法人向けプランでは、入力データがGoogleのAIトレーニングに使用されない
・Claude(Anthropic):Claude for Workでは、会話データがモデルのトレーニングに使用されない
重要なのは、無料プランと有料・法人プランでデータの取り扱いが大きく異なるという点です。 無料プランを業務利用している場合、入力内容の取り扱いについて利用規約を必ず確認する必要があります。
リスク②|機密情報・個人情報の意図しない漏洩
社員が業務効率化のためにAIを使う際、意識せずに以下のような情報を入力してしまうリスクがあります。
- 顧客の氏名・住所・連絡先・購買履歴(個人情報保護法・GDPRに抵触する可能性)
- 取引先との契約内容・価格・条件(営業機密の漏洩)
- 社内の財務情報・未公開の経営計画(インサイダー情報に該当する可能性)
- 従業員の個人情報・給与情報(労務情報の漏洩)
- 開発中の製品・サービスの詳細(知的財産の漏洩)
2023年には韓国のサムスン電子で、社員がChatGPTに社内の機密コードを入力してしまった事例が報道され、大きな問題となりました。日本でも同様の事例が増加しています。
リスク③|AIが生成した情報の誤りによるリスク(ハルシネーション)
生成AIは、事実ではない情報を事実のように生成する「ハルシネーション(幻覚)」と呼ばれる問題を持っています。
AIが生成した文章・数値・法律の解釈・医療情報などをファクトチェックせずにそのまま使用することで、誤った情報を社外に発信したり、誤った判断に基づいたビジネス上の意思決定を行ったりするリスクがあります。
リスク④|フィッシング・ソーシャルエンジニアリングへの悪用
生成AIは、説得力のあるフィッシングメール・なりすましメッセージ・偽情報を大量かつ高品質に生成することができます。悪意のある第三者がAIを使って精巧なフィッシング攻撃を仕掛けるリスクが高まっており、従来よりも巧妙な手口が増えています。
リスク⑤|シャドーIT(無許可のAIツール利用)
会社が公式に導入していないAIツールを、社員が個人の判断で業務に使用する「シャドーIT」のリスクがあります。会社側がどのツールが使われているかを把握できていないため、セキュリティポリシーを適用できず、情報漏洩のリスクが高まります。
AIセキュリティ対策の基本|企業として取り組むべき7つの施策
対策①|AIツールの利用ポリシー(社内ルール)を策定する
最も重要な対策は、「社内でどのAIツールをどのように使っていいか」を明文化したポリシーを策定することです。
ポリシーに含めるべき主な内容は以下の通りです。
- 業務利用を許可するAIツールの一覧
- AIに入力してはいけない情報の種類(個人情報・機密情報・未公開情報など)
- AIが生成したコンテンツの使用前のファクトチェック義務
- AIツールを使った場合の記録・報告のルール
- 違反した場合の対応
「禁止する」だけでなく「何を使ってよくて何を使ってはいけないか」を具体的に示すことで、社員が安心してAIを活用できる環境を整えられます。
対策②|入力してはいけない情報を具体的に周知する
抽象的な注意喚起ではなく、「具体的にどんな情報を入力してはいけないか」を社員全員に周知することが重要です。
AIに入力してはいけない情報の例
- 顧客・取引先の氏名・住所・電話番号・メールアドレス
- 契約書・見積書・請求書の具体的な金額・条件
- 社内の未公開財務情報・経営計画
- 従業員の個人情報・給与・人事評価
- 開発中の製品・サービスの詳細仕様
- 社内システムのパスワード・アクセス情報
「〇〇のような情報はAIに入力しないでください」という具体例を示すことで、社員の理解と実践につながります。
対策③|法人向け・エンタープライズプランを使用する
前述の通り、無料プランと有料・法人プランではデータの取り扱いが大きく異なります。業務でAIツールを使う場合は、データがトレーニングに使用されないことが明示されている法人向けプランを選択することを強くおすすめします。
主要なAIツールの法人向けプラン例は以下の通りです。
| サービス | 法人向けプラン | データポリシーの特徴 |
|---|---|---|
| ChatGPT | ChatGPT Team / Enterprise | チャット履歴がデフォルトでオフ・トレーニング非使用 |
| Gemini | Google Workspace(Business / Enterprise) | 入力データをGoogleのAIトレーニングに未使用 |
| Claude(Anthropic) | Claude for Work | 会話データをモデルトレーニングに未使用 |
※各サービスの利用規約・データポリシーは変更になる場合があります。最新情報は各サービスの公式サイトをご確認ください。
対策④|AIが生成した情報のファクトチェックを義務化する
AIが生成した文章・数値・法律の解釈・事実情報は、必ず人間がファクトチェック(事実確認)してから使用するルールを設けましょう。
特に以下の場面では、AIの回答を鵜呑みにせず、一次情報(公式サイト・法令・専門家への確認)を必ず参照することが重要です。
- 法律・税務・労務に関する判断
- 医療・健康に関する情報数値
- 統計データの引用
- 社外への発信・公表を伴う情報
対策⑤|使用するAIツールを会社が管理・承認する
社員が個人の判断で使用するAIツールを野放しにせず、会社が承認したAIツールのみを業務で使用するルールを設けることで、シャドーITのリスクを低減できます。
新しいAIツールを使いたい場合は、情報システム担当者やセキュリティ担当者に申請・承認を得るプロセスを整備しましょう。
対策⑥|社員へのセキュリティ教育・研修を実施する
AIセキュリティのリスクを知らない社員が、善意で業務効率化のためにAIを使った結果として情報漏洩が発生するケースが多くあります。
定期的なセキュリティ研修を実施し、以下の内容を社員全員が理解できる状態を作ることが重要です。
- AIツールの仕組みとデータの取り扱い
- 入力してはいけない情報の種類と理由
- フィッシング・ソーシャルエンジニアリングの最新手口
- インシデント発生時の報告手順
対策⑦|インシデント発生時の対応手順を整備する
万が一、機密情報をAIに入力してしまった・情報漏洩が疑われるという事態が発生した場合の対応手順を事前に整備しておくことが重要です。
- 発見者がすぐに報告できる窓口の設置
- 初動対応の手順(ツールの使用停止・影響範囲の特定など)
- 必要に応じた関係者・取引先・監督官庁への報告
- 再発防止策の策定
ホームページとAIセキュリティの関係
ホームページを運営する企業にとって、AIセキュリティは特に以下の点で関係します。
ホームページ制作・更新でのAI活用時の注意点
ホームページのコンテンツ作成でAIを活用する際、以下の点に注意が必要です。
顧客情報を含む文章をAIに入力しない
「〇〇社の△△様のケースを元に事例記事を書いて」というように、実際の顧客情報をAIに入力することは避けてください。顧客名・案件内容などを含む情報は個人情報・機密情報に該当する場合があります。
AIが生成したコンテンツはファクトチェック後に掲載する
AIが生成した記事・サービス説明・料金情報などをそのまま掲載すると、誤情報を発信するリスクがあります。必ず人間が内容を確認・修正してから掲載しましょう。
著作権に注意する
AIが生成したコンテンツの著作権に関しては、2026年時点でも法的な整理が進んでいる段階です。AIが生成したコンテンツが既存の著作物に類似している場合のリスクを理解したうえで活用することが重要です。
WordPressなどのCMSにAIプラグインを導入する際の注意点
WordPressには多くのAI連携プラグインが登場しています。プラグインを導入する際は以下の点を確認しましょう。
- プラグインの開発元が信頼できる会社かどうか
- サイトのデータ・ユーザー情報がどのように扱われるか
- 定期的なアップデートが提供されているか
- 不必要な権限をリクエストしていないか
個人情報保護法とAIの関係
日本の個人情報保護法では、個人情報を第三者に提供する場合には原則として本人の同意が必要です。顧客・取引先・従業員の個人情報を生成AIサービスに入力することは、個人情報の第三者提供に該当する可能性があります。
個人情報保護委員会は、生成AIサービスへの個人情報入力について注意を呼びかけており、企業は個人情報保護法の遵守を前提としたAI活用ルールを整備する必要があります。
また、欧州のGDPR(一般データ保護規則)が適用される取引がある場合は、さらに厳格なデータ保護要件への対応が必要です。
まとめ|AIセキュリティ対策は「使う前のルール作り」が全て
AIセキュリティ対策について重要なポイントを整理します。
- 無料プランのAIツールは業務での機密情報入力を避ける(データポリシーの確認必須)
- 入力してはいけない情報を具体的に社員に周知する
- 業務利用は法人向け・エンタープライズプランを選択する
- AIが生成した情報は必ずファクトチェックしてから使用する
- 会社が承認したAIツールのみを業務で使うルールを設ける
- 定期的なセキュリティ教育で社員全員の意識を高める
- 個人情報保護法の観点から、顧客・従業員情報のAI入力は原則避ける
AIツールは正しく使えば業務効率化・コスト削減・競争力強化に大きく貢献します。しかし「便利だから」「みんなが使っているから」という理由で無計画に導入すると、取り返しのつかない情報漏洩につながるリスクがあります。
AIを安全に活用するための「ルール作り」を、導入前に必ず行いましょう。
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